歯の一口コラム

つまようじと予防歯科

三角ようじ

皆さんは歯の健康のために、また虫歯や歯槽膿漏を防ぐために、日常的にはどんなことをしていますか。食後の歯磨き‥ほかに思い浮かぶことがありますか。だれでも簡単にできる歯のケアの方法を1つお教えしましょう。それは「つまようじ」を使うことです。

つまようじの歴史は古く、紀元前五百年頃には、お釈迦様が弟子たちに歯木(しぼく)で歯を清潔にするよう説いています。歯木は奈良時代、仏教と共にインドから中国、朝鮮半島を経て日本に伝わってきました。

大阪の河内長野にある「つまようじ資料館」を見学すると、世界各地につまようじがあることがわかりました。一般的に日本人が「つまようじ」と呼び、歯の間の汚れを取るために使っているようじは、外国では「ひらようじ=TOOTHPICK」と呼ばれています。

 高齢化社会を迎え、歯の大切さを知っている北欧の国々では、つまようじは歯間清掃道具の1つとして欠かせないものになっています。よく使われているのは、断面が二等辺三角形になっている「三角ようじ」で、食後すぐ歯の汚れを上の二辺で取り、底の部分で歯茎を軽くマッサージするのです。最近はこの「三角ようじ」を置いているドラッグストアもあるようですので、試してみてはいかがでしょう。


「つまようじ法」

 「つまようじ法」という歯の磨き方をご存知でしょうか?歯ブラシの毛先を歯と歯の間に入れて磨く方法で、当院の口腔ケアはこの「つまようじ法」で行なっています。

 歯周病は、はじめに歯ぐきが赤くなる、出血するなどの炎症症状から始まりますが、歯ぐきの炎症は歯と歯の間から起こってくるので、歯と歯の間の歯ぐきを刺激して、歯ぐきの細胞(線維芽細胞)を増殖させることで炎症を抑えることができます。「つまようじ法」は歯周病に対して大変効果のあるブラッシング方法と言えます。

 口腔ケアを3ヶ月ごとくらいに定期的に行うことで、歯ぐきからの出血がなくなり、ぐらついていた歯がしっかりしてきた、という方もたくさんおられます。特に痛いところがなくても、「お口のお手入れ」として歯科医院で定期的に口腔ケアを行うことで、歯周病を予防することができるのです。

 口腔ケアはこのような順序で行います。はじめに、お口全体の歯ぐきの状態を検査します。そして、歯ブラシで全体を「つまようじ法」で磨きます。次に、機械を使って歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)を掃除します。この機械は、先端が高速で振動する超音波スケーラーといい、痛みもなく、微小な酸素の泡を歯ぐきの隙間に吹き付けて歯周病菌を減らします。最後に歯ブラシで仕上げ磨きをしてスッキリ、30分くらいで終わります。


「つまようじ法」歯ブラシ V7

歯とかみ合わせの大切さ

たかがかみ合わせ?‥なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、体の調子とかみ合わせには密接な関係があります。

 歯を抜いた所がそのままになっている、歯がすり減っている、入れ歯が合っていないなど、かみ合わせが悪いままで生活をしていると、知らず知らずのうちに無理な働きをするため、そしゃく筋は緊張します。そのため筋肉の延長上にある背骨の上の首の骨(頚椎=頚椎)を圧迫したり、出っ張らせたり、本来あるべき位置から移動させてしまったり、その周辺の血行を妨げたりと、いろいろな異常を発生させ、顎の関節へも影響を及ぼすようになるのです。

全身的な疾患が思い当たらないのに、頭痛がしたり、めまいがしたりする場合は、かみ合わせにその原因があることは十分考えられます。

歯科医の仕事といえば、おそらく多くの方が虫歯や歯槽膿漏を治療したり、歯を抜いたりすることだとお考えだと思います。確かにその通りなのですが、1つひとつの治療がトータルな観点から行われ、口の中全体を良好な状態に保つことが必要だと考えます。わかりやすく言えば、歯を抜くにしても治療するにしても、それによって本来あるべき正しいかみ合わせになるかどうかが、治療の大きなポイントになると思うのです。